こんな世の中だから・・・

２００９．０７．０３

主夫業を始めて一年が経過しましたが、昨年９月の四国お遍路がご縁で巡り会った“創作童話集　花”を紹介したいと思います。


この童話集を入手したのは四国88箇所のお寺の中で何処のお寺だったのかはっきり覚えていませんが、ブログで知り合った“なすびちゃん”とのご縁で一人の生まれながらに肺機能の弱い“リコーダー少年”を知った事から、そのリコーダー少年とお母さんにプレゼントしようと想い、徳島県の七宝山　蓮華寺　住職　Ｉ　さんにお願いして昨年の11月にご無理を言って3冊取り寄せ致しました。

この“花”を取り寄せたあと直ぐ、なすびちゃんのブログのなかで連絡を取りましたが、悲しい事にリコーダー少年の容態は悪化し、短い一生を終えていました。
リコーダー少年の為に作った、小さな篠笛とこの創作童話集　“花”は彼の元には届きませんでした。

今の世の中、人の心は荒んで、自分の事しか考えない、お金のことしか考えない・・・品格を失った日本人が余りにも多くなってしまっているような気が致します。
子供も大人も今一度、心の中を見直す必要があるのかもしれません。

今、短い一生を終えたリコーダー少年に捧げる創作童話集　“花”を通じて、何か心の中に残るものがあればリコーダー少年も喜んでくれると想い少年の一年目の命日までには全て紹介できればと想いカテゴリーを新設しました。

住職のＩさんからは
「この本がご縁となり、新しい花を咲かせ、素晴らしい実を結ぶことを願っております。」と添え書きがなされていました。

第一話

おかげさま

縁・・・見えるもの見えないもの、全てがつながっています。（見えないご縁に感謝しておかげさま。
自分の生き方が見えてきます。）

雨が降りました。雨づぶはみんな　「わーっ！」と、声をあげておちてきました。
でも、たくさんの雨つぶだったので、下にいた人には　『ザーッ!』ときこえました。

一つの雨づぶがつぶやきました。　「あ～あ、ぼくもじめんにおっこちて、とうとうおわりか。」
たくさんのともだちもいろいろなところへおちていきました。
はたけ、こうえん、やね、どうろ、くるま、いけ、木や葉っぱ、そしてかたつむりのうえにも


さっきの雨つぶはさいしょは葉っぱのうえにおち、しばらくしてからじめんにおちました。
「ぼくはなんのために生まれてきたんだろう？」
じめんのなかにしみこみながら、雨つぶはつぶやきました。

雨がやみました。じめんのなかでうとうとしていると　『ゴーッ!』という音とともに、なかにすいよせられました。
「あー、おかげでいきかったよ。ほんとうにありがとう。」
雨つぶをすいよせたのは大きな木のねっこでした。雨つぶはじぶんがやくにたったことがうれしくなりました。
「よかったね。」
雨つぶは木のからだのなかをのぼっていきました。とちゅうで枝の先によりみちしました。
「あー、おかげでたすかったよ。ほんとうにありがとう。」
おれいをいったのは、木の実のこどもでした。木の実は大きくなってじめんにおちました。

じめんにおちた木の実を、りすがひろいにきました。りすは木にむかっておれいをいいました。
「おかげでこどもたちがごはんをたべられます。ありがとう。」
雨つぶはじぶんがやくにたったことがうれしくなりました。「よかったね。」

また、木のからだのなかをのぼっていくと、たくさんのちいさなこえがきこえてきました。
「ありがとう」「ありがとう」ありがとう」・・・・・・
それはたくさんの葉っぱでした。葉っぱは雨つぶのおかげでいきいきとそよぎました。
たくさんの「ありがとう」は下にいた人には「そよそよ」とかぜにゆれる葉っぱの音にきこえました。

雨つぶは木のてっぺんの、一まいの葉の先にのぼりました。じぶんがなんのために生まれてきたか、わかったようなきがしました。
ふいにかぜが葉をゆらしました。
「あーっ、またおっこっちゃう！」
そのとき雨つぶは、じぶんがふわふわとうかんでいることにきがつきました。
まわりにはそらからいっしょにおちてきたたくさんのともだちもうかんでいました。

雨つぶたちはみんなにこにこしていました。でもおちてきたときよりずいぶんからだがちいさくなっていることにもきがつきました。
からだはちいさくなったけど、こころはしあわせなきもちでいっぱいになっていました。

雨つぶたちは空に向かってのぼりはじめました。じめんの上のみんながてをふりながら
「おかげでたすかったよ。ほんとうにありがとう。」とみおくってくれました。
雨つぶたちはかおを見合わせながらいいました。
「よかったね。」
そして雨つぶたちもおれいをいいました。
「ありがとう。」
遠くに大きな虹がかかりました。

次回は第二話・・・あお虫はちょうになれるか